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3歩進んで2歩退がる、3日続けりゃ3歩前。

 

 イソップ寓話の一つに「アリとキリギリス」という話がある。

 

 

 とある草むらのとある夏。アリは、食料を集めてはせっせと巣穴に運んで、忙しくしていました。キリギリスは、ずっと働いているアリたちを眺めて馬鹿にしながら、夏の間中歌って遊んでいました。秋になっても、アリは働き、キリギリスは歌っていました。やがて冬が来て、草むらの植物が枯れてしまうと、キリギリスの食料はすっかりなくなってしまいました。困ったキリギリスは、暖かい間食料を溜め込んでいたアリのことを思い出し、アリたちの巣に「食べ物を分けてください」と言いに行きました。するとアリは呆れてこう言いました。「すまないけど、キリギリスに分けられる分はないよ。」結局、キリギリスは、寒くてひもじい冬を過ごしたのでした。

 

 

 大学生活は、「人生の夏休み」だと言われることがある。その是非は置いておくとして、学歴で値踏みされ歩む道を半自動的に振り分けられてしまう現代、受験戦争を経て名のある大学に入ってしまえば、後は何をしようと未来に大差はない。必要最低限の時間を大学の講義に充てたなら、バイトと遊びと恋愛に惚けて、気づいたときには「学生時代は楽しかった」と振り返りながら、社会の一部に溶けていく。さながら夏の間中歌い狂っていたキリギリスのような姿が、私の大学生という生き物に対するイメージだった。そうして、その内の一人となって、同じように社会の歯車の一個になってしまうのが癪だった。ボート部に入った理由というのは複合的なもので、この捻くれたある種の対抗心的なものも、多分に影響していたと思っている。

 

 誰にも強制されていない。辞めたところで、世間的に責められることは何もない。いつだって投げ出していいのに、それでもボートに学生生活を費やす。そうして、人生の夏休みと対比させるなら、人生の冬学期とも言えそうな社会人生活に備えてきた。日々の瞬間ごとの快楽度は、部活に没頭していない所謂大学生の方が断然高いかもしれない。彼らがカラオケオールに向かうときに、私たちはイージーオールをしていたと思うし、彼らがボウリングに行っても、私たちはローイングしかしてなかった。普通に考えたら、私たちがしていることは大変で疲れること。彼らがしていることは楽しくて羨ましいことだ。私達はアリさん、彼らはキリギリス。

 

 ところがどうだ、遊び呆けていたら社会に何を持って踏み出せるだろう。カラオケの点数か、ボウリングのスコアか。振り返ってみたとき、自分という存在の中にあるものを見つめたとき、そこにあるものの数と濃度は、ボート部生活を送ってきた私達に及ぶわけがないと思っている。それほど、入部してから毎日、自由気ままな友達を羨ましく思ったり、海外を飛び回る友達に心揺らいだりしながらも、せっせと誰にも負けない経験を積み上げてきた。だからこそ、今年のインカレでは心が沸き立つ潤沢な四日間を過ごせた。人に支えられる有り難みや幸せ、誰かの力に自分もなれるということを知った。道半ばで苦戦する様を格好悪いと笑うのは、挑戦することを諦めた人の負け惜しみなんだと分かった。キリギリスだかセミだか知らんけど、好きなだけアリさんを笑えばいいさ。いろんなもん携えて次に来る季節に臨むこっちには、空腹も寒さもありゃしないのさ。環境がちょびっと変わるだけ。いくらでも蓄えた心の糧を武器に、豊かな時間を紡いでいけると思うのよ。

 

 だから、結論はこうだ。

 全日本選手権は、冬の一歩手前。

 ここで、キリギリスになりたくない。

 

 最後だから楽しもうとか、インカレまでよくやったとか、そういう妥協はいらない。冒頭の寓話が、「秋の終わりになって、アリも食料を運ぶのが面倒臭くなりました」と言い、アリもキリギリスも歌い出したら、もう訳がわかんないじゃない。確かに、刹那的に生を全うするキリギリスの生き方も立派な選択の一つで、私たちが脇目もふれず練習していた間に、見落とした好機や捨ててきたものも数え切れないかもしれない。だけど、私はアリであることが好きだし、アリとして人生の夏休みを突っ走ろうと決めた。もう一度あの心躍る挑戦ができるのか、二度とない自分のボート部生活を悔いなく走りきれるのか、不安はつきまとって仕方がないが、それを超えてこそ一人前の働き蟻。全部が全部終わってから、集めてきた糧を眺めて、困ったキリギリスにも分けてあげられるアリになりたい。2018年のチーム一橋で、高みに向けた最後の蟻の熊野参りだ。

 

 

 本日、この日記から4年生の最後のブログ祭りが始まります。村田くん、佐々木主将素敵なバトンパスありがとう! 明日の担当は、謎のコードネームKJを4年間貫いた、瞬き長め紳士・小野健児くんです。学年旅行のキャンプにて、伝説のダブル・チェックシャツ重ね着コーデを披露した彼の、最後の記事にご期待ください。

 それでは、みなさん、また会う日まで。

 

 

みんなの心にいるボートの精霊・ポンドもんど 

4年H組 山本茉友

 

 

 

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